今度こそ一緒に
「なんでこうなんのよ・・・」
おもえば・・・・
「花火は屋形船で見るものでしょう。」
この一言が始まりだった。
そしてたまきが幹事を務めるという提案は、断る間もなく決定されてしまったのだ。
しかしあれだけの努力をしたにもかかわらず
見事にメンバー全員にすっぽかされてしまった。
やけ酒を飲んですっかり出来上がったたまきは屋形船を降り、
なにを考えているのか、そのまま自分を忘れているメンバーがいるであろう病院に向かった。
医局のドアをいきおい良く開ける――
医局には医師達が勢ぞろいしていた。
その視線がいっせいにたまきに集まる。
「こ・・・香坂先生!・・・さっき進藤先生が気付いて、
どうしようかってみんなで相談してたところなんだ・・・!」
硬直していた小田切がどうにか言葉を発した。
しかしたまきの目つきははいっそうきつくなる。
「気付いたってことは、やっぱり忘れてたのね。」
「あ、いや・・・ほら。すごいドタバタしててさ!」
「そ、それに神林先生の奥さん、
本当に妊娠されたって電話かかってきたんで、みんなびっくりちゃって!」
太田川がフォローする。
「へぇ〜びっくりしすぎて忘れちゃったの?
しかも全員そろって?」
だんだんと声が大きくなってくるたまき。
怒りに酔いも手伝って、今にも暴れだしそうなほどだった。
その時
ようや進藤が動いた。
「本当にすまなかった。
花火大会はまた今度、みんなでやり直そう。」
たまきの前に来てなだめるように言う。
「進藤先生・・・。・・・なによ!あなただって忘れてたんじゃない!」
一瞬気を許したかと思われたが、
今回ばかりは進藤の一言で機嫌が直るようなものじゃなかった。
「もぉ〜!みんなひどすぎるわよ!!」
仕舞いには拗ねてしゃがみこんでしまった。
「香坂先生、かわいい・・・。」
矢部が一人喜んでいる。
「あ〜あ、香坂先生ったら完全に酔っ払っちゃってるよ。
勘弁してほしいよな・・・。」
城島が呆れたように呟いた。
しかし、その言葉をたまきは聞き逃さなかった。
「なんですって?こなかったあなた達がいけないんじゃない。」
とうとう床にペタリと座り込んでしまった。
「ごめんね香坂先生。僕がはしゃいじゃったからいけないんだ。
今度は僕が幹事やるから!
あ、もう遅いから帰った方がいいよ。」
神林がどうにかたまきを帰るように促す。
「っていってもこんな時間に浴衣姿で帰すわけにはいかないよね・・・。」
神林の言うとおり、浴衣が乱れ気味のたまきはいつも以上に色っぽかった。
すると小田切が言った。
「あ、じゃぁ、進藤先生もうあがっていいから
香坂先生を送ってってもらえないかな?進藤先生なら心強いし!」
進藤は一瞬戸惑ったが、たまきをどうにか家に帰さなくてはいけないのと、
かといって一人で帰すわけにもいかず、承諾した。
「わかりました。」
「ありがとう!助かるよ!」
「じゃあ、準備してきます。」
言って進藤は医局を出て行った。
進藤が準備をしに言っている間、
メンバーはたまきをなだめたり、
せめて椅子に座るように促したものの、
たまきはかたくなにそこを動いてくれなかった。
しばらくして、私服に着替えた進藤が戻ってきた。
「じゃあ、お疲れ様でした。」
挨拶をしてから、座り込んだままのたまきの腕を支え立たせた。
「ちょっと、なによ!」
突然のことに抵抗する間もなかったのか、
あっさりとたまきの体は動かされた。
「帰るぞ」
「はい??」
状況を掴めていないたまきの腕をつかんだまま、進藤は医局を出て行った。
嵐が去った後のように医局は静けさを取り戻した。
「・・・進藤先生、強引だな〜。」
馬場がぽかーんとしている。
「僕が行きたかったのに!
進藤先生となにかあったらどうするんですか!!」
今度は矢部が拗ね始めてしまった。
「それはそれでいいんじゃないですか。」
城島が矢部をからかうように言う。
「よくないですよ〜!」
「矢部君、どうせ進藤先生には敵わないんだから。諦めなよ。」
太田川の痛い一言も加わり、
矢部はまさにどん底に突き落とされたような気分であった・・・・
一方進藤とたまきは、進藤の車の中にいた―――
続く。
****
あとがき
****
久々の小説UPです。
キリリクしてくださったまどかさん、長い間お待たせしてしまって申し訳ございません。
しかも、続きになってしまいました;
花火大会のあとの話というリクエストだったので、小田切医局長が登場しました!
書きながらわたしもなつかしいなと思いましたよ^^
では、この後どうなるのかお楽しみに^^